工場・倉庫のカメラ配置と撮影ポイント
工場や倉庫に防犯カメラを設置するとき、広い敷地のどこを撮影すればよいのか迷うことはありませんか?工場・倉庫では、人やトラックの出入り、荷物の搬入・搬出、保管エリアでの商品移動など、さまざまな場面を記録するために防犯カメラが使われます。
また、ラックや積み荷によって死角ができやすく、粉じんや振動、温度などの設置環境にも注意が必要です。
この記事では、工場・倉庫における防犯カメラの設置場所と撮影のポイント、荷捌き場での活用方法、設置環境に合わせたカメラの選び方を紹介します。
工場・倉庫での設置場所
工場や倉庫では、人や車両が出入りする場所、荷物を受け渡す場所、商品を保管する場所などを中心に防犯カメラを設置する方法があります。
代表的な設置場所と撮影目的は次のとおりです。
| 設置場所 | 主に撮影したい内容 |
|---|---|
| 人の出入口 | 従業員や来訪者の入退場 |
| 車両の出入口 | トラックなどの出入り、通過時刻 |
| 荷捌き場 | 荷下ろし、仮置き、荷物の受け渡し |
| 倉庫内の通路 | 荷物や作業者、フォークリフトの移動 |
| 保管エリア | 商品や在庫の出し入れ |
| 重要な設備・機器の周辺 | 関係者以外の立ち入り、機器の持ち出し |
工場・倉庫では、広い範囲を撮影するカメラと、特定の場所を詳しく撮影するカメラを組み合わせる方法が役立ちます。例えば、倉庫全体を見渡すカメラは、荷物や作業者がどの方向へ移動したかを確認する用途に向いています。
一方、荷物のラベルや車両のナンバープレートなど、細かな文字を確認したい場合は、撮影する範囲を絞り、対象を大きく映す必要があります。
また、工場・倉庫ではラックや積み荷、待機中の車両などによって見通しが変わります。何も置かれていない状態ではなく、実際に荷物を運んだり、保管したりしている状態を想定して設置場所を考えることが重要です。
出入口の人物・車両の撮影
工場・倉庫の出入口では、従業員や来訪者などの歩行者と、トラックなどの車両を撮影することがあります。歩行者と車両では、大きさや通過する位置、速度が異なるため、撮影する目的に合わせてカメラの配置を考える必要があります。
例えば、従業員や来訪者の顔を確認したい場合は、人が通る位置で顔を正面または斜め前から撮影できる配置が適しています。
一方、トラックの出入りを確認したい場合は、門や車両用の出入口を広く撮影し、車両の通過方向や時刻が分かる配置が役立ちます。
また、大型車両が出入りする場所では、トラック自体がカメラの視界を遮ることがあります。例えば、門の近くに車両が待機していると、その奥にある歩行者用の出入口が見えなくなる場合があります。門やシャッターを開閉した状態、車両が待機している状態なども踏まえ、必要な場所が撮影できるか確認しておきましょう。
トラックのナンバープレート撮影
トラックの出入りを記録するだけでなく、ナンバープレートの文字まで確認したい場合があります。例えば、搬入予定のない車両が敷地内へ入った際に、車両のナンバーを調べたい場合です。
しかし、トラック全体が映るカメラであっても、ナンバープレートの文字まで読み取れるとは限りません。
遠くから広い範囲を撮影すると文字が小さくなり、車両が動いていると映像がぶれる場合があります。また、夜間はライトや赤外線の反射によって、ナンバープレートが白く映ることもあります。
そのため、車両の全体像を撮影するカメラと、ナンバープレートを詳しく撮影するカメラを分ける方法があります。
| 撮影したい内容 | カメラの配置 |
|---|---|
| 車両の出入り | 門や出入口を広く撮影 |
| 車両の種類・大きさ | 車両全体が映る位置 |
| ナンバープレートの文字 | 車両の通過位置に合わせて狭い範囲を詳しく撮影 |
| 運転者や同乗者の様子 | 必要な人物が確認できる位置 |
ナンバープレートを撮影する場合は、なるべく正面に近い角度で撮影できる位置が適しています。また、車両が移動する速さに合わせて、シャッター速度や照明などを調整する必要があります。
車両ナンバーの撮影を目的とする場合は、専用の撮影機能を備えたカメラも選択肢です。
設置前には、実際に通行する車両を撮影し、昼間だけでなく夜間でもナンバープレートの文字を確認できるか試しておくことをおすすめします。
荷捌き場の撮影ポイント
荷捌き場とは、トラックから荷物を下ろしたり、出荷する荷物を積み込んだりするための場所です。工場や倉庫では、荷物が到着してから保管・出荷されるまでの経緯を確認するために、防犯カメラが利用されます。
例えば、納品された荷物の数量が合わなかった場合、トラックから何個の荷物を下ろし、どこへ運んだのかを映像で調べたいことがあります。このような用途では、荷物の移動を「到着」「仮置き」「引き渡し」の流れで記録できる配置が役立ちます。
荷捌き場での荷物の移動と撮影例

- 到着
- 仮置き
- 引き渡し
例えば、トラックの荷下ろし場所からパレットの仮置き場所までを広く撮影すると、荷物がどこへ運ばれたのかを追いやすくなります。一方、作業台での荷物の受け渡しまで詳しく確認したい場合は、その場所を大きく撮影できるカメラを組み合わせる方法があります。
荷物のラベル・数量の確認
倉庫では、荷物が運ばれた経緯だけでなく、箱のラベルや数量を確認したい場面もあります。例えば、段ボール箱を積んだパレット全体を撮影できていても、箱の側面に貼られた配送ラベルの文字までは読み取れないことがあります。
そのため、ラベルの文字まで確認したい場合は、荷物が一時的に止まる作業台や検品場所などを大きく撮影する方法が適しています。
ただし、箱のラベルがカメラとは反対側を向いていたり、作業者の体で隠れていたりすると、文字を確認できません。設置前には、実際に使用する箱やラベルを置き、どの向きから撮影すれば必要な情報が映るか試してみてください。
また、動いている荷物や作業者の手元を撮影する場合は、映像のぶれにも注意が必要です。
カメラが1秒間に記録する画像の枚数を「フレームレート」と呼びます。フレームレートを高くすると動きの変化を細かく記録できますが、それだけで映像のぶれがなくなるわけではありません。
一コマの映像がぶれる場合は、光を取り込む時間である「露光時間」や、周囲の照明の明るさも関係します。特に、荷物が素早く移動する場所では、実際の作業を録画して確認することをおすすめします。
ラック・積み荷による死角の対策
倉庫では、商品を保管するラックやパレット、積み上げた荷物などによって、防犯カメラから見えない場所が生じます。例えば、倉庫の通路を見渡す位置にカメラを設置しても、荷物を積んだパレットが置かれると、その奥の床や出入口が見えなくなる場合があります。さらに、在庫量が増える繁忙期には、普段より多くの荷物が積まれることで、撮影できる範囲が狭くなることもあります。
次の例では、同じ場所でも荷物の量によって見通しが変わることを示しています。
入口の手前を見通せる
このような場所では、通路を見渡すカメラに加えて、別の方向から撮影するカメラを設置する方法があります。例えば、ラックの奥にある出入口を確認したい場合は、通路の手前から撮影するだけでなく、出入口付近を別の角度から撮影する方法も考えられます。
また、全方位カメラを利用すれば、1台で周囲の広い範囲を撮影することができます。ただし、ラックや積み荷の裏側まで透かして撮影できるわけではありません。
カメラを設置する際は、荷物が少ない状態だけでなく、普段の保管状態や在庫が増えた状態も想定してみてください。
なお、工場・倉庫ではフォークリフトや大型の荷物が移動するため、カメラ本体や配線を車両・荷物が接触しにくい位置へ設置することも重要です。運転者の視界や作業動線、設備の安全性を妨げない配置を考える必要があります。
粉じん・振動・高温への対策
工場や倉庫では、一般的なオフィスとは異なる環境に防犯カメラを設置することがあります。例えば、粉じんが発生する製造現場や、機械の振動が伝わる場所、夏場に高温になる倉庫などです。このような場所では、設置環境に対応した性能を持つカメラが必要です。
| 設置環境 | 確認する性能・条件 |
|---|---|
| 粉じんが多い | 防じん性能 |
| 雨や水がかかる | 防水性能 |
| 機械の振動が伝わる | 耐振動性能、取付方法 |
| 高温・低温になる | 動作温度範囲 |
| 海に近い施設 | 耐塩害性能 |
| 可燃性ガスなどが存在する危険な場所 | 必要な防爆性能・適合条件 |
IP66の防じん・防水性能
防犯カメラの仕様には「IP66」「IP67」などの表示があります。これは、機器の内部にほこりや水が入り込むことを防ぐ性能を表す等級です。例えば、IP66の場合、最初の「6」は粉じんの侵入に対する保護性能、後ろの「6」は強い噴流水に対する保護性能を表します。粉じんが多い場所や、雨がかかる場所などにカメラを設置する際に参考になります。
ただし、IP66のような防じん・防水性能だけで、耐振動性や動作温度、耐塩害性能まで判断できるわけではありません。例えば、屋外に近い倉庫では、防水性能に加えて、夏場や冬場の温度に対応できるかも確認する必要があります。
また、可燃性ガスや爆発性の粉じんが存在するおそれのある場所では、通常の防犯カメラをそのまま設置できるとは限りません。こうした区画では、設備管理者や安全管理担当者と相談し、必要な防爆性能や設置条件を満たす機器を使用する必要があります。
シャッター付近の逆光と夜間撮影
大型シャッターの近くでは、屋外と建物内の明るさに大きな差が生じることがあります。例えば、明るい屋外からトラックが入ってくる場合、車両の周囲はよく映っていても、運転者や荷台が暗くなることがあります。このような明暗差が大きい場所では、WDR(ワイドダイナミックレンジ)など、逆光に対応する機能が役立ちます。
また、夜間はトラックのヘッドライトがカメラに向くことで、映像の一部が白くなったり、周囲が暗く映ったりする場合があります。
特に、24時間稼働する工場や倉庫では、昼間だけでなく夜間の録画も確認することをおすすめします。車両が出入りし、荷物を運んでいる状態で実際に録画してみると、明るさだけでなく、映像のぶれや積み荷による死角も把握しやすくなります。
荷物の移動を調べるための映像管理
工場や倉庫では、納品や出荷に関する問い合わせが後日発生することがあります。例えば、出荷先から「荷物が1箱足りない」という問い合わせがあった場合、出荷記録と防犯カメラの映像を照らし合わせて確認する方法があります。
しかし、倉庫内に多数のカメラを設置していると、どのカメラの映像を確認すればよいのか分かりにくくなることがあります。そのため、カメラには「第1搬入口」「出荷検品台」など、撮影場所が分かる名前を付けておくと便利です。
また、荷物の受け渡し記録や保管番号、出荷日時などを映像と照合できるよう、録画装置の時刻も正しく管理する必要があります。例えば、出荷記録に残った時刻から録画を探す場合、システム同士の時計がずれていると、目的の場面が見つかりにくくなります。
録画の保存期間については、出荷後に問い合わせが届くまでの日数や、休日を挟んで確認が遅れる場合などを踏まえて考えるとよいでしょう。
なお、映像から分かるのは、撮影できた範囲での荷物や人の動きです。商品の種類や数量については、出荷記録や検品記録なども合わせて確認することが重要です。
事故・ヒヤリハットの振り返りへの活用
工場や倉庫では、防犯目的だけでなく、作業中の事故やヒヤリハットが発生した際に、当時の状況を振り返るためにカメラ映像を利用することがあります。例えば、フォークリフトと歩行者が接近した場面を記録していれば、車両の動きや周囲の状況を後から確認できます。
また、荷物が落下した場合に、直前の積み付け状況や荷物の運び方を確認する手掛かりになることもあります。こうした映像は、作業手順や通路の使い方を見直す際の参考になります。
ただし、一般的な防犯カメラやAIによる人物検知機能を、そのまま事故を防ぐ安全装置の代わりにすることはできません。
例えば、機械の危険な部分へ人が入ったときに機械を安全に停止させるには、その用途に適した保護装置や安全設計が必要です。工場の安全対策では、危険な場所へ人が近づかないようにするガードや、危険を検知して機械を停止させる安全装置、作業手順などを組み合わせます。
防犯カメラは、作業や事故の状況を記録し、後から振り返るための設備として活用し、事故を防ぐための安全対策は別途設ける必要があります。
また、作業中の映像を安全教育や業務改善に利用する場合は、撮影や利用の目的、映像を閲覧できる担当者などについて、従業員へ説明しておくことも大切です。