逆光・白飛びを抑えるWDRの仕組み
店舗やオフィスの出入口に防犯カメラを設置したとき、屋外は明るく映っているのに、出入りする人物の顔が暗くなってしまうことがあります。反対に、人物の顔を明るく映そうとすると、屋外の景色が白くなって見えなくなることもあります。このような明るい部分と暗い部分の差が大きい場所では、「WDR」という機能が役立ちます。
この記事では、逆光や白飛びが起こる理由と、WDRの仕組みや効果、カメラの設置位置による対策を紹介します。
逆光による黒つぶれ・白飛びの原因
逆光とは、撮影する人物や物の後ろに強い光がある状態です。例えば、日中の店舗入口を室内から撮影すると、屋外の太陽光が強く、室内との明るさに大きな差が生まれます。カメラが一度に記録できる明るさの幅には限りがあるため、このような場所では次の現象が起こりやすくなります。
| 明るさの合わせ方 | 映像で起こること |
|---|---|
| 明るい屋外に合わせる | 屋外は見えるが、室内側にいる人物の顔が暗くなる |
| 暗い室内に合わせる | 人物の顔は明るくなるが、屋外が白くつぶれる |
暗い部分が黒くつぶれて細部が分からなくなることを「黒つぶれ」、明るい部分が白くつぶれてしまうことを「白飛び」といいます。例えば、白飛びした屋外の映像では、看板の文字や車体の模様などが確認できなくなることがあります。また、白飛びによって記録されなかった細部は、録画後に映像を暗く調整しても元に戻すことはできません。
WDRの仕組みと効果
WDRとは「Wide Dynamic Range(ワイドダイナミックレンジ)」の略で、明るい部分と暗い部分が同じ画面にある場合でも、両方を見やすく撮影するための技術です。例えば、明るい屋外に面した店舗の出入口では、屋外の景色が白くつぶれるのを抑えながら、室内側にいる人物の顔も見やすくすることができます。

※映り方の違いを示す説明用イメージです。
WDRは、明るい屋外と暗い室内が同時に映る出入口のほか、日差しと影が混在する駐車場や、窓から強い光が入るオフィスなどでも役立ちます。
WDRによる映像調整の仕組み
WDRにはいくつかの方式があります。代表的なのは、明るい部分を撮影するための短い露光時間と、暗い部分を撮影するための長い露光時間を使い、それぞれの映像を組み合わせる方法です。
露光時間とは、カメラが1枚の画像を作るために光を取り込む時間のことです。例えば、明るい屋外は短い露光時間で撮影することで白飛びを抑え、暗い室内は長い露光時間で撮影することで人物の顔を明るく映します。この2つの映像を組み合わせることで、明るい部分と暗い部分の両方を確認しやすくします。
また、1つの映像に画像処理を加え、暗い部分や明るい部分を見やすく調整する方式もあります。
WDRの性能の比較ポイント
dB(デシベル)の数値
防犯カメラの仕様表では、WDRの性能を「dB(デシベル)」という単位で表すことがあります。この数値は、カメラが記録できる最も明るい部分と最も暗い部分の明るさの比率を表したもので、数値が大きいほど幅広い明暗差に対応できることを示します。
ただし、実際の映像の見やすさは、明暗の幅だけでなく、画像処理の性能や撮影対象の動きにも左右されます。そのため、異なるカメラを比較する場合は、dBの数値だけでなく、人物の顔や背景の細部がどの程度確認できるかも重要です。
動いている人物の映り方
WDRでは、動いている人物の映り方にも注目してください。明るさの異なる複数の画像を組み合わせる方式では、撮影の間に人物が動くことで、輪郭が二重になることがあります。このような現象を「ゴースト」と呼びます。例えば、出入口に立ち止まっている人物の顔は鮮明でも、歩いて通過する人物では顔や腕の輪郭が不自然に映る場合があります。
WDRの処理方法によって動く対象の映り方は異なるため、人物の顔を記録したい場合は、実際に人が歩く場面の映像を確認することをおすすめします。
また、WDRの調整を強くすると、暗い部分が見やすくなる一方で、ノイズや不自然な色が目立つ場合もあります。画面全体が明るく見えることだけでなく、確認したい人物の顔や文字などが自然に記録できているかが重要です。
設置位置と照明による逆光対策
逆光への対策には、WDR機能を使用するほかに、カメラの設置位置や向きを工夫する方法もあります。
カメラの向きと撮影位置の調整
例えば、室内から入口を正面に撮影すると、人物の後ろに明るい屋外が大きく映り込みます。この場合、カメラを少し横へ移動し、屋外が背景に入る割合を減らすことで、人物の顔を撮影しやすくなる場合があります。
入口を正面から撮影する場合

入口を横から撮影する場合

また、来訪者の顔を詳しく記録したい場合には、入口を通過した直後ではなく、人物が室内へ入った位置を撮影する方法もあります。室内の壁などを背景にすることで、屋外との明暗差を小さくし、顔を撮影しやすくなります。
入口全体の様子も記録したい場合には、広い範囲を撮影するカメラと、人物の顔を撮影するカメラを分けて設置する方法もあります。
室内側の照明の追加
人物の顔が暗く映る場合には、室内側の照明を補う方法も効果的です。例えば、入口付近に照明を設置し、来訪者の顔へ光が届くようにすると、屋外との明るさの差を小さくすることができます。
ただし、照明がカメラのレンズへ直接向いていると、強い光によって映像が見づらくなる場合があります。また、ガラスへの反射や人物の顔に強い影ができることもあるため、カメラと照明の位置関係を考えて設置することが大切です。
なお、太陽光が直接レンズへ入る場所では、映像への影響に加えて、機器の設置条件にも注意が必要です。取り付ける向きや位置は、カメラの設置説明に従ってください。
時間帯に応じた逆光対策
防犯カメラが受ける光の条件は、時間帯によって変わります。例えば、東向きの入口では朝、西向きの入口では夕方に、太陽光の影響を受けやすくなる場合があります。また、駐車場では夜間の車のヘッドライト、店舗では閉店後の照明の消灯などによっても、映像の明暗差が変化します。
そのため、カメラの設置やWDRの設定を調整する際は、日中の映像だけでなく、実際に逆光や明暗差が大きくなる時間帯の録画映像を確認することをおすすめします。例えば、夕方の西日によって入口の人物が暗く映る場合には、その時間帯に人が出入りする場面を録画し、顔や背景の見え方を確認すると、WDRの設定やカメラの向きが適切か判断しやすくなります。
また、設定を変更した際には、カメラの位置や撮影範囲、WDR・露光の設定、確認した時間帯などを記録しておくと、変更前後の映像を比較する際に役立ちます。
WDRによる映像の調整と、逆光を受けにくい撮影位置や照明の工夫を組み合わせることで、明暗差の大きい場所でも必要な情報を記録しやすくなります。