画角・焦点距離で変わる撮影範囲
防犯カメラで出入口全体を撮影したい場合と、出入りする人物の顔を詳しく撮影したい場合では、適した撮影範囲が異なります。カメラの撮影範囲に関係するのが「画角」と「焦点距離」です。また、同じカメラでも、撮影する対象までの距離や設置する向きによって映り方が変わります。
この記事では、画角・焦点距離の基本的な意味と、撮影する場所や対象に合わせたカメラの設置方法について紹介します。
画角と撮影範囲
画角とは、カメラが撮影できる範囲を角度で表したものです。画角が広いカメラは周囲を広く撮影でき、画角が狭いカメラは特定の場所を大きく映すことができます。例えば、駐車場全体の車の動きを撮影したい場合は広い画角、出入口を通る車を詳しく撮影したい場合は狭い画角が向いています。
上から見た撮影範囲
カメラ同じ位置の対象店舗カメラから見た映り方

車だけでなく、入口や左右の植栽など周囲の様子も一緒に映ります。
水平画角と垂直画角
防犯カメラの仕様には、画角が「水平」「垂直」「対角」で記載されていることがあります。
| 種類 | 表している範囲 |
|---|---|
| 水平画角 | 左右にどこまで撮影できるか |
| 垂直画角 | 上下にどこまで撮影できるか |
| 対角画角 | 画面の対角方向にどこまで撮影できるか |
例えば、店舗の出入口を撮影する場合、水平画角が広ければ左右の扉まで映しやすくなります。一方、人物の顔から足元まで撮影したい場合には、垂直画角も重要です。仕様に記載された角度を比較する際は、水平画角同士、垂直画角同士で確認してみてください。
なお、画角が広くても、柱や棚の裏側など、カメラから見えない場所を撮影することはできません。
焦点距離と映り方の関係
焦点距離は、レンズの仕様に記載される「mm(ミリメートル)」単位の数値で、画角を決める要素の一つです。同じ大きさの撮像素子を使うカメラでは、焦点距離が短いほど広い範囲を撮影でき、長いほど狭い範囲を大きく映すことができます。
| 焦点距離 | 画角 | 向いている撮影 |
|---|---|---|
| 短い | 広い | 店舗の売り場、駐車場全体など |
| 長い | 狭い | 離れた出入口、特定の通路など |
例えば、店舗の売り場全体を見渡す場合には焦点距離の短いレンズが向いています。一方、離れた場所にある通用口など、限られた範囲を詳しく撮影したい場合には、焦点距離の長いレンズが役立ちます。
ただし、焦点距離と画角の関係には、カメラ内部の撮像素子(光を映像に変える部品)の大きさも関係します。そのため、異なるカメラを比較する場合は、焦点距離のmm数値だけでなく、実際の水平画角や垂直画角も確認することが大切です。
固定焦点レンズとバリフォーカルレンズ
防犯カメラのレンズには、焦点距離が固定された「固定焦点レンズ」と、焦点距離を変更できる「バリフォーカルレンズ」があります。
固定焦点レンズは、焦点距離があらかじめ決められているレンズです。撮影範囲が決まっている場所で使いやすく、構造が比較的シンプルなことが特徴です。
バリフォーカルレンズは、一定の範囲内で焦点距離を変更できるレンズです。設置する場所に合わせて画角を調整できるため、出入口の幅や通路の位置に撮影範囲を合わせたい場合に向いています。例えば、店舗の出入口にカメラを設置した際、周囲の壁まで広く映っている場合には、バリフォーカルレンズで画角を狭め、人物が通る場所を大きく撮影することができます。手動で焦点距離を調整するタイプのほか、対応する機器から遠隔で調整できるタイプもあります。
なお、焦点距離を変更して撮影範囲を調整することと、ピントを合わせることは異なります。画角を変更した後は、撮影したい対象にピントが合っていることも確認してください。
撮影距離と撮影範囲の関係
カメラの画角が同じでも、撮影対象までの距離が変わると、映像の中で対象が占める大きさが変わります。例えば、同じカメラで人物を撮影する場合、カメラに近い人は大きく映り、遠くにいる人は小さく映ります。
また、撮影距離が長くなるほど、その距離で撮影できる範囲も広がります。カメラが正面を向き、平らな壁を撮影するような条件では、撮影距離が2倍になると、映る横幅も約2倍になります。そのため、同じ人物を撮影しても、距離が遠くなるほど顔や服装などの細かな部分は確認しにくくなります。
例えば、建物の出入口にいる人物の顔を詳しく撮影したい場合には、カメラを入口に近い場所へ設置する方法があります。また、設置場所を変更できない場合は、望遠側へ画角を調整できるレンズを使うことで、離れた対象を大きく映すこともできます。
撮影対象に合った向きと設置高さ
画角や焦点距離に加えて、カメラを取り付ける高さや向きも重要です。同じ場所を撮影する場合でも、上から見下ろすか、人物の正面に近い角度から撮影するかによって、記録できる内容が異なります。
人物の顔の撮影
人物の顔を撮影したい場合は、人がカメラの前を通るときに、顔がどの角度で映るかを考える必要があります。例えば、店舗の出入口にカメラを設置する場合、天井の高い位置から急な角度で見下ろすと、人物の頭頂部が中心になり、顔が確認しにくくなることがあります。
高い位置から撮影した場合

顔が見える角度から撮影した場合

顔を詳しく記録したい場合には、人物が通る方向に合わせて、顔が見える角度から撮影することが重要です。
ただし、カメラを低い位置に設置すると、ほかの人や荷物に映像を遮られたり、カメラに触れられたりする可能性もあります。顔の見えやすさだけでなく、周囲の障害物やカメラの保護も考慮して設置位置を決めるとよいでしょう。
荷物の受け渡しの撮影
荷物の受け渡しを記録したい場合には、作業台だけでなく、荷物を扱う人の手元や、受け渡し前後の動きが映ることが重要です。例えば、作業台の正面から撮影すると、担当者の体によって手元が隠れてしまうことがあります。そのような場合には、作業台を斜め上から撮影するなど、荷物と手元を確認しやすい位置への設置が役立ちます。
また、店舗の入口から荷物の受け渡し場所までの動きを確認したい場合には、それぞれの場所が撮影範囲に入っているかを考える必要があります。
出入口と荷物の受け渡し場所の例

- 入口を通る位置
- 荷物を置く位置
車両の撮影
駐車場全体を撮影したい場合には、広い画角で車の動きや周囲の状況を見渡せるカメラが向いています。一方、出入口を通る車両の特徴やナンバープレートを詳しく撮影したい場合には、車が通過する場所を絞って撮影すると、車両を大きく映すことができます。
また、車両は走行中に撮影することも多いため、撮影する角度や明るさ、車の速度なども映像の見え方に関係します。特に夜間のナンバープレート撮影では、ヘッドライトの影響や動きによるぶれも考慮する必要があります。
設置前の撮影範囲の確認
防犯カメラの設置位置を決める際には、図面上の撮影範囲だけでなく、実際に撮影した映像を確認することをおすすめします。例えば、店舗の出入口であれば、実際に人が出入りする場面を撮影し、顔がどの程度映っているかを確認します。荷物の受け渡し場所であれば、作業台に荷物を置いたり、担当者が荷物を動かしたりする場面を撮影すると、手元が隠れる位置や、映像から外れる場所が分かります。
撮影した映像を再生して、必要な部分が十分に映っていなければ、レンズの画角を調整したり、カメラの設置位置や向きを変更したりする方法があります。1台では撮影範囲を確保できない場合には、必要な場所へカメラを追加する方法もあります。
設置場所を考える際は、「どこを撮影するか」だけでなく、「何を、どの角度から、どれくらいの大きさで映したいか」まで具体的にしておくと、目的に合ったカメラやレンズを選びやすくなります。